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INITIATIVE「自分のキャリアは自分で創る」WEBマガジン

ひと 2020.11.30 「想い」を持つ人を応援したい!個人の可能性・創造性を引き出す新規事業開発とは

文:INITIATIVE編集部

地域複業やワーケーションなど、社会課題を解決し、個人の可能性・創造性を最大限に引き出す新しい働き方を創る新規事業を手掛ける、株式会社パソナJOB HUBの加藤遼さん。「個人の『想い』が起点となる創造的なアクションに、ビジョンや価値観に共感する仲間が集まることで新規事業が生まれる」と語る加藤氏に、その仕事の軌跡と事業創造に向けた想いを伺いました。


社会課題と向き合いながら、新規事業を生み出し続ける


― パソナグループの中で、社会課題を解決する様々な新規事業を立ち上げてこられたそうですね。

今は、プロフェッショナルによる経営課題解決を行う顧問コンサルティング事業やタレントシェアリングプラットフォーム事業を手掛けるパソナJOB HUBで、ソーシャルイノベーション部長と事業開発部長を兼務しています。ソーシャルイノベーション部では、新しい働き方を創り、新しい社会のあり方を創造することをミッションに、行政や企業と連携した地域企業と複業人材のマッチングや、ワーケーションの企画・運営などに携わっています。

また、事業開発部では当社のメンバーの想いが起点で始まる新しい事業やプロジェクトをインキュベーションすることをミッションとしています。それぞれの思いやアイデアに寄り添って、社内外から仲間を集めてプロジェクト化し、事業化しています。

そのほか、個人として内閣官房シェアリングエコノミー伝道師、総務省地域力創造アドバイザー、総務省地域情報化アドバイザー、東京都観光まちづくりアドバイザー、観光庁観光分野における女性活躍推進検討会委員など、政策に携わる仕事にも関わっています。

― 枠にとらわれない仕事の仕方ですね。

もともと、私はちょっと生意気で(笑)。新入社員の頃から先輩に口答えしたり、自分が信じた道を頑固に貫いたりしていて、「はぐれ者」と言われたこともありました。しかし、「加藤はそれで良いんだよ」と徐々に周りの方々に認めていただき、私の良い面を活かしていただきました。

入社4年目のときにリーマンショックが起こって、雇用環境が一気に悪化しました。会社から「若者の雇用を創る」ために行政と一緒に事業を創るように言われ、未就職の若者のためにインターンシッププロジェクトを企画し、中小企業庁と共に、若者たちと採用難の中小企業の橋渡しを行いました。
法律を精査したり、インターンシップ保険を新たに作ったり…。「仕事って、こんなにたくさんの種類があるんだ!」ということを経験させていただいて(笑)、社内外の専門家の方々と一緒に事業を成功させることができました。

― そのころ、東日本大震災が起きました。

大震災が起こった当日の夜には早速、「これから会社として東北復興を始めるぞ!」と先輩から言われました。東北の支店の皆さんとも連携して、ゴールデンウィーク明けから現地に行きはじめ、現状のヒアリングを開始しました。

若者の雇用支援や、被災者と被災企業のマッチング事業、厳しい状況にあった農林漁業の方々に向けた研修事業などを立ち上げる中で、今の課題を解決するだけでなく、被災地域の方々が今後も継続的に幸せに働いていくためには何が必要なのかをずっと考えていました。
そして、東北で起業家を育成し、新たな産業と雇用を創ろうと、グループ代表の南部や役員メンバーと相談して「東北未来戦略ファンド」を社内に創設しました。そこから、パソナ東北創生、VISIT東北、イーハトーブ東北など、社内ベンチャーがいくつも誕生しました。



― 2014年には、国が地方創生に力を入れ始めましたね。

東北の被災地支援の取組みに、一定の評価をいただいたのだと思います。国が進める地方創生の取組みに関わらせていただくようになり、それがUIJターン移住促進事業、観光インバウンド事業の立ち上げにつながりました。

さらに経済産業省からは、グローバルで勝てる日本の中小企業の海外展開を支援しようと、ASEAN地域に着目し、パソナのグローバル事業本部と共に中小企業のASEAN展開支援事業を進めました。大企業のグローバル人材を中小企業にマッチングしたり、日系企業が海外で事業展開するときに現地人材を確保するうえで日本企業のファンを増やすべく、タイやベトナム、インドネシアで現地の大学と連携して日本企業文化講座やジョブフェアなどを開催しました。

クールジャパン戦略の一環では、クールジャパンの製品やサービスを開発して海外展開していくための事務局運営を受託したり、クールジャパンファンドにも関わりました。当時は、国内で地方に出張に行きつつ、タイやベトナム、インドネシアなど海外出張も多くて、あまり東京にいなかったかもしれません(笑)。

2015年には観光・インバウンドやシェアリングエコノミーの文脈で、DMOや地域商社の立ち上げ、Airbnbとの業務提携、パソナグループ本部ビル1階にある「TRAVEL HUB MIX」の立ち上げなど、様々な新しい取り組みを行いました。今も社会的ニーズをリサーチしながら、新規事業の立ち上げに挑戦しています。

「想い」が出会うことで新しいアイデアが生まれる


― 自由に自分のアイデアが実現できる環境なんですね

パソナグループでは「とりあえずやってみよう!」という意見の人のほうが圧倒的に多いので、少し慎重な意見が出たとしても、最終的には実行に移すことが多いです。
一番の障壁は自分の「心の壁」です。自分が「こうありたい」というビジョンがはっきりしていれば、心の壁は突破できますし、それによって周りの人たちも心の壁も打ち破ることできます。その結果、「モノの壁」や「制度の壁」も乗り越えていけると思います。

― 新しい事業アイデアは、自分で考えるのでしょうか。

社内外、国内外で価値観が共感する仲間と出会い、彼らと理想の未来を語り合うことで、具体的なアイデアを出して実行していきます。
内なる自分の価値観や想いに気づく体験とも言えるでしょう。自然の摂理や人類の歴史・文化から学ぶことで、自然や人間社会の中での自分の存在や役割に気づき、自分の心のあり方に意識を向ける習慣ができると、自然と内なる創造性が生まれてチャレンジにつながっていきます。

例えば、地方創生事業にはマクロの視点も大事ですが、ミクロの視点で地域住民の方々が今後どうありたいかがものすごく重要です。そこに寄り添った事業開発でなければならないとずっと考えていて、地域企業の経営支援や、地域住民の方々のやりたいことの実現を支援する環境整備に徹底的に取り組んできました。

― 社会課題を解決する事業に関心が高いんですね。

社会課題という大きなものより、どちらかと言うと、顔の見える関係性の人たちの可能性や創造性を最大化することのほうに興味があります。

「想い」を持った人に相談されて、じっくりと話を聞いていくと、自信がなかったり、やりたいけどできないと思っている人がすごく多くて…。私は逆に、やりたい気持ちさえあればできるという経験を何度もしてきているので、そういう人たちには「大丈夫!やってみればできるよ」という話をしています。
想いを持ってチャレンジすれば、共感して応援してくれる人は必ず集まりますし、もがいていれば絶対に助けてくれる人は出てきます。まずは「一緒にやってみようよ」という形で支援するケースが多いです。

「想い」があっても、「無理だろう」と自信を無くして、それの想いが消えてしまうのが一番悲しくて。「想い」を持った人が挑戦して、それを実現して輝いて、その結果として社会の課題を解決していく。仲間を集めてコミュニティを作り、チームとなってビジョンに近づいていくエネルギーが、さらにたくさんの人たちを巻き込み笑顔にする。
そのポジティブなエネルギーが溢れると、世の中が良くなると信じているんです。それに少しでも貢献できれば嬉しいですね。


「人の可能性・創造性」を最大化したい


―  そもそも、なぜパソナに入社しようと思ったのですか。

一緒に選考を受けた同期が良い人たちで、純粋で素直で明るくて元気で…。僕はひねくれているので、彼らと付き合ったら自分も良い人になれそうな気がしました(笑)。
また、阪神淡路大震災後の当社の復興支援の取組みやグループ代表・南部靖之の活動をまとめた『神戸復興にかける男』というビデオを見て感動しました。働くことはお金を稼ぐためだけではなく、社会の様々な問題に直面して抑圧されている人を輝かせることで社会に貢献していくものであるという思想・哲学に惹かれて入社を決意しました。

― どのような時に達成感を感じますか。

日々、「今日は頑張ったなぁ」と感じることはあるのですが、大きな達成感を味わったことはあまりないんですよね。どちらかといえば、無力感を感じることのほうが多いです。
ただ、自分で決めたことはあまり頑張らないのですが(笑)、誰かが想いを持って走ってるのを応援したくなってしまう性格で、誰かが始めプロジェクトを手伝っているケースがほとんどです。それをやりだすときりがなくなるのですが、頼られると嬉しくて…。その数がどんどん増え続け、今では常時20~30のプロジェクトに関わっています。

あとは、旅が大好きなんですよ。「旅するように」働きたいと思っています。去年は仕事の出張とプライベートの旅行で、1年のうち3分の1は旅に出ていました。それぞれの場所には、人とのご縁で足を運ぶケースが多いです。旅先では色々な刺激がありますし、学びや出会い、価値観の交流があって、新しい気付きを得ることで、新たな事業やプロジェクトが生まれることも多いです。そうした経験をずっとしているので、旅自体が好きですね。

― これからのビジョンを聞かせください。

よく聞かれるのですが、特にないんです。自分や周りの人たちが楽しく生きていさえすれば、それでいい(笑)。
ただ、人と人が傷つけ合うのは見ていられないんです。傷つけ合ってしまう背景には、一人ひとりの心のあり方、持ちようがあると思います。大切なことは他人に流されずに、自分を持つこと。コロナ禍において、社会も大きく変化し、不安に感じる人も多いと思います。そうした時代こそ、他人に依存することなく自信を持つ。自分の想いに気付いて、それに基づいて行動してくことが求められていると思います。



私自身のミッションは「人の可能性・創造性を最大化する」こと。地域複業やワーケーション等の新規事業に取り組んでいますが、全てはこの想いから生まれています。
地方での複業を通じて、自分の想いを表現する事業を手掛ける経営者や、それぞれの生き方を大切にしている地域の方々と出会うと、自分に問いが生まれます。また、ワーケーションでも、自分の可能性を最大化する環境の中で働くことが重要です。オフィスではない違う場所で、異業種の人と、自身の利益だけでなく社会課題のために働く。そうした環境では、自分の想いがないと判断ができません。自分の可能性や創造性を発揮せざるを得ない環境に身を置く良い経験になります。

これからも、社会の様々な課題の中で自信を無くした方々が、「想い」を持って一歩を踏み出すことをお手伝いする事業を、数多く創っていきたいと思います。

人生や仕事に影響を与えた本

この一冊というのはありません。本をよく読むようになったのはここ2~3年で、人類の歴史・文化・文明に関するものが多いです。最近面白かったのは『ゲド戦記』(アシュラ・K・ル=グウィン著)、『2050年は江戸時代―歴史逆行SF』(石川英輔著)。自然との共生の話で、その中での人のあり方、心のあり方が書いてあります。コロナ禍で在宅勤務をしていた時期は、1週間で10冊ぐらい読んでいました。学生時代は勉強していなかったんですが、最近はよく勉強してます(笑)。

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