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INITIATIVE「自分のキャリアは自分で創る」WEBマガジン

ひと 2020.09.17 困難を仲間と共に乗り越える! VISIT東北 齊藤社長の挑戦

文:INITIATIVE編集部

「こういう時代に生きていて、幸せです。」
東北へのインバウンド観光開発・プロモーション事業を展開する株式会社VISIT東北 社長の齊藤良太から最初に飛び出したのがこの言葉だった。

これには驚かされた。起業から4年半。コロナ禍でインバウンド観光客が途絶え、どれほど困っているかと思いきや「幸せだ」という回答が返ってきたからだ。

「東日本大震災をきっかけに起業を決めて、昨年(2019年)の台風19号で壊滅的なダメージを受け、コロナが来て…。こんなことって、そうそうないじゃないですか。いろんなことが一気に積み重なってドラマみたいな人生だなと。仕事だけじゃなくてプライべートでも同時多発的に色々なことが起きるなんて、確率で言えば相当少ないことで。人生って、すごく面白いなと思いますね」

変化の激しい現代に生きていること自体をラッキーだと感じていると言うのだ。その強靭な精神力はどこから来るのだろうか。


東北未来戦略ファンドに応募

大学を卒業して富士通に入社し、その後、日本マイクロソフト株式会社に転職。東日本大震災が起きた日は、ちょうど出張で宮城県石巻にいた。もともと東北の出身だったこともあり、齊藤はボランティアで復興の手伝いをしていたが、どうしても「モヤモヤ感」があったという。「ボランティアだけでは、最後までやり遂げられない」という気持ちが強くなっていく。

「起業するまでに5年かかりました。地元に対してというか被災地に対して『ちょっとお手伝いした』ぐらいしかできなくて。もっとスケール感を出して、自分の力を還元したいなと思ったんです」

しかし、安定した仕事を捨てるのは勇気がいる。「守られた環境から飛び出して起業するのは、かなり度胸が必要でした。それまでは、社会貢献を仕事にしようとは思っていませんでした。震災をきっかけに、優先順位が変わったのだと思います。まずは社会のために、2番目に自分の給与をもらうために働こうと、意識が変わりました」

そんな中、パソナグループが東北の未来を創る起業家を募集し、事業化を支援する「東北未来戦略ファンド」と出会う。
「パソナが東北復興に注力していて、被災地域でベンチャー企業を立ち上げたり、地方創生に向けて淡路島での事業に力を入れていることを知りました。その取り組みにすごく共感し、すごいなと思って応募しました。グループ代表の南部靖之から『ベンチャーをたくさんつくるぞ!』という決意を聞いて、そうしたビジョンが自分の想いと完全に合致したんです」

4年半で4社を起業

2016年1月、仙台で東北へのインバウンド観光開発・プロモーション事業を手掛ける「VISIT東北」を立ち上げた。
その年のうちに、外国人個人旅行客の受け入れ促進のための「東北FITベンチャー連合」を発足。東北6県の旅館や商品を販売するWEB事業「TOHOKU365Project」もスタートさせ、「東北インアウトバウンド連合」も設立した。



翌年には、民間主体の「一般社団法人宮城インバウンドDMO」を設立。宮城県食材を使ったイタリアンジェラート店をオープンした。

2018年には、復興庁から新しい東北交流拡大モデル事業の「審査員特別賞」を受賞。4月に宮城県丸森町を丸ごとプロデユースする地域商社「株式会社GM7」を設立し、丸森町の新ブランド米「いざ初陣」や、コンセプトショップ「MARUPHORIA」を誕生させた。

2019年、「株式会社日中BHEコミュニケーションズ」をつくり、中国と共に教育、健康、ローカルビジネスを進め、また台湾企業とも観光誘致で連携している。7月には地元食材を使った生タピオカ店を丸森町に開設。農業生産事業もスタートさせた。

本社壊滅を乗り越える

次々と新たな事業に挑戦し、業容を拡大していた矢先、2019年10月に日本列島に台風19号(令和元年東日本台風)が猛威をふるい、丸森町にも甚大な被害が発生した。
宮城県丸森町に移転したばかりのVISIT東北や子会社の本社も被災。オフィスは床上1mまで浸水し、タピオカの工場も壊滅的な被害を受けた。新米の発売を開始したばかりの「いざ初陣」などの商品も泥まみれになり、商品として販売することが難しい状況となった。



そんな状況にも、齋藤はへこたれない。丸森町と自社の再起に向けた新事業「7本の矢」を発表。すぐに新事業を立ち上げていく。

「困難に思えないんですよ。起業してからゼロ、あるいはマイナスからのスタートなので、これが普通という感じです。ずっと悪いわけでも、ずっと良いわけでもなく、波というものは必ずありますから。いま、たまたま下にへこんでいますが、必ず上にくるタイミングがあるので、ネガティブになる必要はないと思っています。むしろ波の幅があるほうが、伸び代があります」前を向いて常にポジティブである。

「恐れがないんです。お金は奪われても、命を奪われるわけではないという考え方なので」とサラリと語る。

仲間が集ってきてくれた

「VISIT東北は設立以来、事業成果を社会に還元していこうというモデルでやってきましたが、それが本当に正しいのか、正解なのかという迷いは常にありました。しかし、少しずつ仲間が集まってきてくれて、人が人を呼んで、志の輪が広がってきました。台風19号で被災したときも、復興・復旧に向けて皆で一丸となって進んで行く醍醐味を体感することができました。こうした経験を通じて、自分がやっていることが正しいという確信を持つことができました。自分や仲間の成長にも繋がっていますし、地域の役にも立っているし、良いこと尽くしなんですよ!」

会社のメンバーも、地域の方も、東京などで関わっている人も、皆が良い方向に進んでいるという実感があるという。
台風19号による被災の際は、たくさんのパソナグループの有志メンバーが支援物資を積んで日本全国から駆け付けた。もちろんVISIT東北のためでもあるが、地域に暮らす方たちのお手伝いもさせていただいた。VISIT東北の兄弟会社である、同じくパソナグループのイーハトーブ東北は岩手県から毎日訪れ2週間炊き出しを続けた。週末になると東京本社や東北支店各地から10名を超えるボランティアが駆け付けた。

「パソナらしさとは、なんと言っても『社会の問題点を解決する』という企業理念。全社員がそれを毎日意識して動こうと思っているのは、素晴らしいことだと思います。その想いを、私も誰にも負けないくらい強く持って働いています。簡単には儲からないし、めちゃくちゃ働かなきゃならないし(笑)。やることはいっぱいあります。地域商工団体や町内会などの近所付き合いもありますしね…」
忙しそうだが、とても楽しそうでもある。


地域に雇用を生み、地域を盛り上げる

「日本全国、どの地域でも同じだと思いますが、それぞれの土地にはその地方独特の価値観や文化があります。時にそれを超えていかなければ新たな道が拓かれないこともあります。そういう壁をどうやって乗り越えていけばいいかを考えたら、その地域の子供の価値観に行きつきました。今の子供たちは、自分や自分の子供たちも含めて戦後教育の、ある意味では画一的な価値観の中で育ってきています。しかし、そうではない子供をどうすれば育てていけるのか。どう教育していけばいいのか、ずっと考えていますし、実践していきたいですね」

日本人が持っている今までの価値観や、既存の教育の仕組みも立ちふさがる壁ではあるが、「壁がないと意味がない」とも言う。
「壁があったほうが、それを越えた時に見える景色が違います。それだけ大きな仕事を成し遂げたということでもあるはず。壁はWelcomeです!日本全国の仲間と一緒に乗り越えていくのは楽しい」と言い切る。

これからのビジネス展開を聞いてみた。
「インバウンド観光事業でスタートしましたが、農業も飲食も外販ECも手掛けていますので、コロナ禍の中で色々な事業を見直し、整理することに着手しています。多岐にわたる取り組みの点と点をつなげる仕組みづくりをしていこうと。時代のトレンドを読んで、ITを絡めたり。成功するビジネスの芽はあちこちに見えています。コロナ禍を受けてインバウンド観光はストップしていますが、農業や6次産業化、地域の人材育成プラットフォームとしての教育、幅広い福祉領域などで、たくさんのスモールビジネスを地域で作ってビジネスモデルを確立していきます。そうすれば地域に雇用が生まれ、地域が盛り上がります」。

齊藤の地方創生に対する想いは、どんな時も前を見据えている。

齊藤良太 プロフィール

1982年宮城県仙台市生まれ。2005年San Francisco State University社会科学部 国際関係学科卒業後、富士通株式会社に入社。3年後に日本マイクロソフトに転職し、2015年退職。2016年、VISIT東北を設立。

<人生・仕事に影響を与えた本:
「Good Luck」(アレックス・ロビラ著)>
この本からは、無いと言われたものを無いのだろうと決めつけるのではなく、本当に無いのか?と疑い、無いならば努力という行動をすることが大事であるということを教えてもらいました。努力を怠らなければ幸運をつかみ取ることができる。Good Luckというわけです。社会人なりたてくらいの時にこの本を読み、それ以降、「無理」という言葉を私の辞書から消しました。全ては努力して創るもの。そして努力すれば必ず結果が付いてくる。そう信じて動いていたら、常に私には幸運が付きまとっている気がします。

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