文:INITIATIVE編集部
昨今、グローバル人材の採用拡大に伴い、国内の外国人留学生と合わせて、海外の現地学生を積極的に採用する日本企業が増えています。しかしながら、国内の外国人留学生と海外学生との間では、日本企業や日本文化への理解度、就職活動に臨むスタンスなどが大きく異なることも多く、採用活動においても異なる手法を取り入れる必要があります。そこで前編に引き続き、外国人学生の採用支援を手掛ける株式会社ASIA to JAPANの三瓶雅人社長が、今年7月の「Pasona Group HR Forum」で講演した内容をもとに、グローバル人材の新卒採用のポイントを紹介します。
<前編はこちら>
Pasona Group HR Forumでの講演の様子
海外大学での採用活動のポイント
続いて、海外大学の学生を採用する際のポイントを2点ご紹介します。
1点目は、学生に寄り添い、日本式の就職活動の方法をきちんと教えるリクルーターのような担当者を設けることです。
特にレジュメ(応募書類)の書き方について事前に説明しておくことで、日本人学生と一律に比較したい面接官に対しても対応ができます。
また、日本企業独自のキャリアステップへの理解があるのか確認も大切です。海外ではポジションごとの採用が一般的なため、日本企業への就職においてもそのような採用方法を前提に「私のポジションはどこですか」という質問をされるケースがあります。
日本企業での働き方への理解が浅かったり、日本で働くことの動機が弱い学生に対しては、きちんと寄り添って学生に気付きを与える人事担当者を置くことが大切です。
2点目は、面接前の徹底的なサポートです。
面接実施日が決まったらその1週間程前にSkype等で簡単な面談をして、名前や年齢、学歴などの基本的な情報の確認をするとよいでしょう。国や個人によって、年齢の数え方や学歴などの表現が異なるケースがあります。
またその際、自社で働きたい理由を聞き、考えが浅いようであれば再考を促すことも重要です。海外の現地学生にとっては、日本で働けるチャンス自体が少ないため、外国籍人材を採用している日本企業の中に手当たり次第に応募し、個社ごとの志望動機が曖昧な学生も多い傾向があります。
そして面接当日は、面接時間の15分前にはスタンバイし、Wi-Fi等の接続環境の確認を促しましょう。また、連絡時間は現地時間でお伝えすることが良いでしょう。
海外学生を採用する際は、「そこまでやらなくても…」というくらいで丁度良いのです。
【参考記事】EU一般データ保護規則「GDPR」~グローバル人事における個人情報の留意点
https://www.pasonagroup.co.jp/media/index114.html?itemid=2457&dispmid=796
学生とのギャップを埋める面接を
学生のターゲットを設定し、採用プロセスの設計を終えたら、いよいよ選考活動・面接が始まります。
面接において「特にこの学生は採用したい!」と思った場合、面接の最中でも積極的に口説くと日本人よりも響くケースが多いです。また、上位の役職者に会えることも学生に響くため、社長等による面接が可能であれば有利に働きます。
ちなみに日本企業の場合、基本的に超大手のグローバル企業以外は海外学生にほとんど知られていません。そのため、「面接官が優しい」「対応が丁寧」など、学生にとって好印象に残る面接官がいれば大きな強みになります。
そこで、面接官と学生のギャップを埋めるために、事前に学生のプロフィールなどを面接官に伝えるオリエンテーションを実施することも有効です。ここでは先述の、学生に寄り添う採用担当者の出番となります。
実際に面接で聞くべき質問は、事前のSkype面談で確認した志望理由の深掘りや、日本でずっと働きたいという意思があるかどうかです。また、母国で働ける可能性が無いようであれば、それをきちんと伝えておくことも大切です。
さらに、必ず両親に日本で働くことを相談したかを確認し、具体的に何と言われたのか、状況を把握することも大切です。
例えば、仲の良い母親だけに相談し「好きなようにしなさい」と言われたものの、内定後に父親に言ったら反対され、結局辞退になったというケースもあります。
海外での採用活動では、物理的制限により、どうしても国内よりも面接回数が少なくなってしまいます。面接回数が少ないと学生も不安になるため、Skype等でも良いので複数回の面接を実施し、相互理解を促し、不安を解消することが望ましいでしょう。
【参考記事】留学生キャリア支援のプロが見る「グローバル人材」の採用トレンド
https://www.pasonagroup.co.jp/media/index114.html?itemid=2080&dispmid=796
日本で活躍するまで寄り添う
次に、内定後のフォローと、入社後の定着に向けたポイントについて説明します。
海外で新卒採用を行っている企業の中でも、入社までの期間で日本語能力や資格取得に向けた学習機会を用意する企業もあれば、メールでの事務的な連絡のみに留まる企業もあります。
日本で働いている外国籍人材の声として、入社までに「日本語のサポート」が欲しかったという意見は多くあります。また、「入社前にオンラインで勉強したい」「先輩社員やメンター、カウンセラーとつながって話を聞きたい」といった声も聞きます。
企業として全ての要望に応えることは難しいですが、メンターを設けるなどの対応をとることができれば、内定学生の満足度が高まるだけでなく、採用力という観点からも競合企業に差をつけられるかもしれません。
海外学生が日本で働くうえでは、まず学生から社会人になり、そして生活基盤が母国から日本になり、さらには言語が母国語から日本語になるという、3つの大きな変化が訪れます。
日本人の新入社員よりも変化が大きい分、手厚いフォローは不可欠です。来日して入社してしまえば、社会人としてのビジネスマナーや会社の事業内容、日々の業務知識など、細かく覚えなければならないことがたくさんあります。現地でも行える日本語教育は、尚更のこと入社前にしておきたいところです。
最後に、採用にあたっては、できれば同じ国から2名以上採用することを目標にし、単年度ではなく複数年かけてじっくりと取り組むことをお勧めします。そうすることで、学生にとっても前述の3つの大きな変化に対応しやすくなり、入社後の定着率も上がり、長く活躍してくれるでしょう。
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