文:INITIATIVE編集部
世界中のオフィスで使用されている、あらゆる「紙」を無くすために、様々な挑戦を続ける米国
ドキュサイン(DocuSign Inc.)。今回は
【前編】に引き続き、DocuSign Inc.のKeith Krach(キース・クラック)会長に、ドキュサインによって実現できる新しい働き方やビジネスのあり方を聞いたインタビューをお届けします。
※【前編】はこちら
▲DocuSign Inc. キース・クラック会長
「紙文化」を破壊する
――ペーパーレス化やデジタル化において、アメリカは日本より進んでいる印象があります。アメリカでは「紙文化」をどうやって変えてきたのでしょうか?
もちろん、アメリカにおいてもデジタル化はまだ道半ばですが、確かに日本は世界的に見ても紙の利用が多いと感じます。アメリカでデジタル化が進んでいる背景には「消費者がデジタル化に慣れてきた」ことがあげられます。
ドキュサインも世に出た当初は、業務の効率化や通信費の削減などのメリットにより、企業側から支持されていました。しかし、今では消費者側がドキュサインを求めるようになり、逆に企業を牽引するようになってきました。
アメリカでデジタル化が特に進んでいるのは不動産業界です。家を買うということは人生で一番高い買い物ですし、難しい決断が求められると同時に、とても幸せな瞬間でもあります。そうした人生における節目のイベントで、ドキュサインの導入が拡がっているのです。
一度ドキュサインを使えば、その人の持つデバイスにその情報が記録され、その後、自動車や生命保険、健康保険などを購入する際もそのまま利用することができます。店舗に足を運ぶ必要はないですし、極端なことを言えば飛行機の中でも、Wi-Fi環境さえあれば契約書類にサインができてしまいます。
紙を多用していた時代は、1枚の書類を探すのにも多くの時間と労力がかかりました。引き出しをひっくり返し、書類の山をかき分けて書類を探した経験は、誰もがお持ちだと思います。ドキュサインであればその作業もなくなります。
消費者にとって使い勝手が良いということはとても重要で、一度ドキュサインの便利さに慣れてしまうと、ファックスしたり郵送したりという過去のやり方には戻れなくなります。
日本の消費者も、慣れてしまえば古いやり方には戻れなくなるでしょう。
――デジタル化に向けて文化的ハードルを乗越えるにはどうしたらよいでしょうか?
企業や社会における紙文化を破壊し、デジタル化を実現するには、トップダウンとボトムアップの両方が必要です。これまでも企業でドキュサインを導入する場合、CEOやCFOなどのトップマネジメントによる発信でスタートし、少しずつ下の階層に降ろしていくケースが多いです。
反対に、下からの発信も大切です。ドキュサインのような新しい仕組みは、若い人ほど慣れるが早いです。例えばアメリカでは大学や高校で先行して導入が進んだため、若い人たちの利用率が高く、不動産分野などでもまず若い人から利用が広がっていきました。
――他に工夫している点はありますか?
10年前にドキュサインのサービスを初めて展開したときは、利用者が見慣れているものをシステムに取り入れました。
皆さんも紙の契約書を取り交わす場合、サインが必要な場所に付箋を貼ったりしますよね。それと同じコンセプトをドキュサインのページ上に設け、どこにサインをすれば良いのか一目で分かるようにしました。
そうした取り組みが文化的なハードルを越えるのに一役買っているといえます。
この度、日本ではシャチハタ様と提携し「電子印鑑」の機能をスタートしましたが、それも同じことです。日本の方々が普段見慣れているもの、やり慣れている作業をデジタル上でやっていただくのです。
ドキュサインが変える社会のあり方
――現在、日本では「働き方改革」が議論されています。ドキュサインは生産性向上や残業削減にも効果的ですね。
それは非常に大きいトピックです。ドキュサインによる業務のデジタル化で、生産性向上と業務のスピードアップが期待できます。
日本人は長時間働いていると言われていますが、その時間の中には書類を探している時間間なども入っているかもしれません。また、その日のうちに上司の承認をもらわなければいけないというだけの理由で、部下が退社できないケースもあるかもしれません。
しかし、ドキュサインを使えば、上司が富士山の山頂にいても承認してもらうことができます。たとえオフライン状態で承認したとしても、タイムスタンプが残るため、後でオンラインになったときにその時間で問題なく処理が実行されます。
また、オフィスでなければできなかった仕事が通勤電車の中でできるようになれば、子育て中の方はより多くの時間を家族や子どもと過ごすことができます。
以前、ソーシャルメディアを使って、あるコンテストをしたことがありました。「あなたが『ドキュサイン』した最も変な場所、面白い状況は何ですか?」と体験談を募集したのです。ある女性は、出産するときの分娩台の上で『ドキュサイン』したそうです。
ドキュサインは、いつでも、どこでも、どんなデバイスからでも、安心して利用可能なのです。
――ドキュサインの仕組みは、企業の業務以外でも様々な応用ができそうですね。
カリフォルニア州では警察にもドキュサインが導入されています。
例えば、警察が捜査したい建物があった場合、これまで警察官はわざわざ裁判所に出向いて捜査令状を請求しなければいけませんでした。場所によっては何百マイルも車で戻って、裁判所に書類を提出して、裁判官がそれを見て承認して、はじめて捜査令状が交付されていました。
今ではドキュサインを使って、事件が起こっている現場で令状を申請することができます。しかも、裁判官が裁判所ではなく自宅にいたとしても問題ありません。それだけ効率的に犯罪者を捕まることができるようになります。(笑)
他にも、世界中で開催されている知的障害者のスポーツイベント「スペシャルオリンピックス」でもドキュサインが使われています。競技参加前にアスリートは医療承諾書と参加申込書を提出しますが、仮にそれを家に忘れてしまったら、その人は参加できなくなってしまいます。本人もご家族もとても悲しむでしょう。ドキュサインを使うことで、今ではそのようなことはなくなりました。
このように、ドキュサインはイマジネーションの届く限り、様々な場面で使っていただくことができます。ドキュサインのソリューションを使って世の中の様々な仕組みをデジタル化していくことで、社会をより良く変えることができると信じています。
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