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INITIATIVE「自分のキャリアは自分で創る」WEBマガジン

HR 2017.02.21 ストレスチェックから考える個人と会社の未来

文:株式会社セーフティネット 代表取締役社長 山﨑敦氏


● 山﨑敦氏
1967年防衛大卒。防衛庁海上自衛隊に入隊し、第6航空隊司令、下総教育航空群司令などを歴任し、1999年12月に退職。2001年1月にセーフティネットを設立、代表取締役就任。

順調な滑り出しを見せたストレスチェック制度


2015年12月から、ストレスチェックの実施が義務化されました。厚生労働省ではこの制度を「定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげる取り組み」と位置づけています。

義務化前には、企業から「いつまでにやればいいのか」「どんな準備が必要か」「会社の衛生委員会では何をすればいいのか」といった制度そのものに関するご質問を数多くいただきました。また、厚生労働省が推奨する設問でも57問もあり、従業員がきちんと回答してくれるのかという懸念もありました。

そのためセーフティネットでも、制度の仕組みや意義を説明した従業員向けのマンガ冊子を作ってクライアント企業で配布していただくなどの取り組みを進めてきました。
また、一人1台のパソコンがない工場・事業所などに向けてマークシート形式の回答用紙の準備なども進め、万全の態勢を整えました。

義務化から1年が経ち、実際には当初の想定以上にスムーズに運用されていると感じています。2016年12月時点で、1,200社を超えるクライアント企業が実施済みで、中小企業での実施も増えています。企業内での受検率は平均7割いけばいいと考えていたのですが、私たちのクライアント企業では実際には91%を超えています。
こうした制度の導入は最初が肝心で、1年目に多くの従業員が受検してくれれば、2年目以降も継続する可能性が高まります。そういう意味では、この状況に安心感を持っています。

個人へのサポートと集団分析の活用


ストレスチェックは実施すれば終わりというものではなく、あくまでも入り口となる検査です。その結果をもとに対策を立てて実行し、次のストレスチェックで効果があったかを確認する。あまり効果がなければ違うやり方を検討する…というような使い方をすべきものです。ですから、結果の見方と活用の仕方が重要となります。

個人の結果は、回答した従業員本人と実施者である産業医などしか知ることができません。ですから高ストレス該当者に対してアプローチするためには、産業医の役割は大きいと言えます。
しかし、従業員の中には「面接指導を申し出たら不利益があるのではないか」「高ストレスという結果は出たけれど、そんなに自覚がない」などと考えて、なかなか面接指導に踏み切れない人も多いのが実態です。

そこで、セーフティネットでストレスチェックを実施した企業の従業員には、カウンセラーによる相談、「プレ面談」を受け付けています。プレ面談は電話で実施していますが、顔が見えないほうが気軽に話せるという人も多く、中には電話で話すだけでストレスが発散できたというケースもあります。
またプレ面談の結果、面接指導を受けることなった場合、本人の同意を得て面接指導を担当する医師に電話の内容をお伝えすることもあります。このように、高ストレス該当者本人の状況整理をしながら、医師側の手助けにもなる、橋渡しの役割も私たちが担っています。

一方、企業は個人の結果を知ることができません。部・課等の職場単位で行う「集団分析」は、制度上は努力義務となっていますが、企業が対策を検討する場合には重要な取り組みです。集団分析では、職場単位の健康リスクを把握できます。業務内容や労働時間といった仕事の量的・質的な負担と、上司や周囲の支援などを掛け合わせ、どの職場にどの程度健康リスクがあるのかを見定め、対策を講じる必要があります。



メンタル不調に対しても「予防意識」が重要


メンタルヘルス不調者を出さないように対策する際、最も大切なのは「予防意識」だと私は考えています。例えばインフルエンザが流行すると、マスクや手洗い・うがい、予防接種などを励行することは当たり前になっています。
こうした体の健康に対しては進んで対策を打つのに、メンタル不調に対しては何もできていない、何をしたらいいのかわからないという人が多いのが実情です。ですから、体と同じようにメンタルに対しても予防意識を高めなければならないと感じています。

うつ病をはじめとするメンタルヘルス不調は、本人に原因がある場合だけでなく、上司が加害者となって追い込んでしまうケースも少なくありません。ですから、本人を対象としたセルフケア研修に加えて、リーダークラスのライン研修が重要になります。
部下の不調にいち早く気づくことや、部下指導をする際に必要以上にマイナスになる言葉や態度を発しないようにするリーダーシップを身につけてもらなければ、本当の意味でモチベーションを上げながら成果を上げるチームを作ることは難しいでしょう。

ストレスチェックを契機に、マネジメントを見直すことにも取り組んでいただきたいと思います。特に、上司や同僚とのコミュニケーションは重要です。コミュニケーションをよくすることで、高ストレス該当者が「上司は忙しくて自分のことに目が向かなかったんだ」「周りは自分を助けようとしてくれていたのに気づいていなかった」と理解し納得する場合もあります。

対策を実施し、ストレスチェックで評価をして、次の対策につなげる。効果が見えてくるまで最低でも3年はかかると思いますが、続けるうちに個人も組織も自然と認識が変わってくるはずです。

ストレスチェックをよりよく活用するために


ストレスチェックの今後の課題として、面接指導の申し出をどのように増やすかがあります。当社の実績では、高ストレス該当者のうち3%しか面接指導を申し出ていないという結果が出ています。
メンタルヘルス不調は必ずしも仕事だけが原因なわけではなく、プライベートの問題の可能性もあるため、面接指導を強く推奨するべきかどうかは悩ましいところです。

メンタルヘルス不調者を減らしていくためにも、「自分はメンタル不調だ」「うつ病だ」ということを平気で言えるような社風や社会の雰囲気になってほしいと願っています。

ストレスチェックの実施と分析は、企業ごとに求めるものが異なるため、当社では今後もさまざまなサービスを提供してサポートしていく予定です。全国規模で対応が可能ですので、まずはご相談をいただければと思います。

(2017年1月発行「HR VISION vol.16」より)

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