本文へスキップします。

環境だより「SONAERU」

40年以内の発生率は90%。今、私たちがすべき備えとは―。

関東大震災から今年で100年を迎えます。災害大国の日本において、いつどのような災害が起こってもおかしくない中、近年特に危惧されているのが「南海トラフ地震」です。

政府の地震調査委員会は、南海トラフ沿いでマグニチュード(M)8~9級の巨大地震が、20年以内に起こる確率は60%程度、30年では70~80%、40年であれば90%程度になると発表しています。自然災害の発生を止めることはできなくても、私たちの行動次第で被害を抑えることは可能です。

今回は南海トラフ地震を改めておさらいしながら、パソナグループの「環境月間」である3月に開催した、熊本地震発災時に被災地の陣頭指揮を執られた兵谷芳康氏による「防災セミナー」の内容の一部をご紹介します!

改めておさらいする「南海トラフ地震」

①聞いたことはあっても説明できない?そもそも「南海トラフ」とは?

南海トラフとは、主にフィリピン海プレートとユーラシアプレートが接している区域のこと。南海トラフ沿いのプレート境界は、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に1年あたり数cmの速度で沈み込んでおり、ユーラシアプレートが地下に引きずり込まれ、蓄積されたひずみが限界に達した際に跳ね上がることで、大きな地震を引き起こします。

それが、「南海トラフ地震」と呼ばれているのです。そしてその際、プレートが跳ね上がることに伴って海水も跳ね上がることから、震災時には、大きな津波も発生すると言われています。

(※1)気象庁HP「南海トラフ地震とは」
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/nteq/nteq.html

②実は、100年以上前から繰り返されている「南海トラフ地震」

南海トラフ地震は、概ね100~150年間隔で繰り返し発生しています。最後に南海トラフ地震が発生したのは、1946年の昭和南海地震。最後の発生から70年以上が経過していることから、次の南海トラフ地震発生への切迫度が高まっています。

改めておさらいする「南海トラフ地震」

➀動画で知る。「地震シミュレーション」を見てみよう

「大きな地震が起きる」ということは知っていても、実際に震災が発生した際どのような被害が想定されるのか、イメージを持つことはなかなか難しいのではないでしょうか。地震発生後には、火災や津波など様々な二次災害が想定されています。

南海トラフ地震の発生後、どのような災害が想定されているか―。内閣府が発表している「地震シミュレーション」をご覧ください。

https://wwwc.cao.go.jp/lib_012/nankai_02.html

②南海トラフ地震は、一度で終わらない?

過去の南海トラフ巨大地震発生時には、プレートの全域が割れる場合と、東側と西側で時間を置いて2回の巨大地震が起きる場合の、2つのパターンがあったことがわかっています。

そのため、次に発生する南海トラフでは、後者のパターンのように、一度大きな地震が起きた後も、近日中に二度目の発生があるかもしれません。二次災害の発生に向けてどのような備えが必要か、事前に準備しておくことが大切です。

(※2)読売新聞社「くらしのなかに防災ニッポン」
https://www.bosai.yomiuri.co.jp/article/8801?paged=2

被災地の陣頭指揮経験者から学ぶ!私たちにできることとは

パソナグループでは、パソナグループでは毎年3月を、過去の災害を忘れず、防災を自分ごととして捉えて行動するために「防災月間」と設定しています。

そして今年の防災月間では、消防庁、総務省、内閣府でご活躍され、熊本地震発災時に被災地の陣頭指揮を執られた、兵谷芳康氏を迎え「防災セミナー」を開催しました。
それでは最後に、セミナー内容の一部をご紹介します。

(左)全国危険物安全協会 理事長 兵谷芳康氏

①地震は避けられないが、人的被害は大幅に減らすことができるのでは

日本ではこれまでも様々な震災が発生しました。大きな人的被害については、東日本大震災では約9割が溺死、阪神・淡路大震災では約8割が建物崩壊、関東大震災では約9割が火災により発生したといわれています。

また平成28年の熊本地震では、避難生活等で地震後に亡くなった「災害関連死」が、地震による「直接死」の約5倍になりました。ただこうした人的被害についても、もし各自ができる備えや発生直後の初期対応がうまくできていれば、かなり被害を減らすことができるのではないかと思います。

「備え」は、家・事務所の耐震化や、家具・備品の固定、配置など、空間確保対策などを行う「ハード面」と、安否確認の手法確認、備蓄確認などの「ソフト面」の、双方からの準備が求められます。

以下のチェックリストを確認してみてください。多くの方が「やっておいたほうが良い」と知ってはいるものの、皆さんは実際にどこまで行動に移せていますか?

【チェックリスト】 今すぐにできる備え、あなたはできていますか?

☑ ご家族同士の安否確認方法は決まっていますか?
自宅だけではなく、勤務先でも確認できていますか?

☑ 避難場所や避難経路を確認していますか?
避難場所、避難経路を事前に確認しておきましょう。実際に避難経路を歩いてみると、思ったよりも避難場所までに時間がかかったり、危険な道があったりと、想定外なこともあります。実際の防災訓練を通じて、事前に避難経路を把握しておくことが大切です。

☑ 安否確認方法をご存じですか?
別々の場所にいるときに災害が発生した場合でもお互いの安否を確認できるよう、日頃から安否確認の方法や集合場所などを、事前に話し合っておきましょう。

☑ 非常用持ち出しバッグを準備できていますか?
非常時に持ち出すべきものをあらかじめリュックサックに詰めておき、いつでもすぐに持ち出せるようにしておきましょう。

☑ 食料・飲料などの備蓄は十分ですか?
防災のために特別なものを用意するのではなく、できるだけ、普段の生活の中で利用されている食品等を備えるようにしましょう。

☑ 家具の置き方を工夫していますか?
大地震が発生したときには「家具は必ず倒れるもの」と考えて、転倒防止対策を講じておく必要があります。

②“これくらいなら大丈夫”という「バイアス」に注意

「まだ大丈夫」「今回も大丈夫」「自分は大丈夫」―。
これらは、「正常性バイアス」「確証バイアス」などと呼ばれています。自然災害や火事、事故、事件などといった、自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまうバイアスです。

都合の悪い情報を無視したり、「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、震災時に逃げ遅れの原因になっているといわれており、命を守れるかに大きく影響することになります。

【災害対応の3原則】************************
①疑わしい時は行動
②最悪事態を想定して行動
③空振りは許されるが、見逃しは許されない
**********************************

③災害時、“奇跡”は起きない。日頃からどう備えるかが「鍵」

皆さん、「釜石市の奇跡」の話をご存じですか?
東日本大震災発生後、岩手県の釜石市では約1,300人もの方が被害者となりました。大槌湾に面した鵜住居地区も津波で壊滅状態となったのですが、鵜住居小学校と釜石東中学校にいた児童・生徒約570人は、日頃から行っていた避難訓練をもとに、子供たちや地域の方々が自ら「もっと高いところに避難しよう」と呼びかけて行動をしたことで、全員無事に避難することができたという実話です。

ここで重要なのは、これは“奇跡”ではなく、日頃から行っていた訓練を、当たり前に実践したことから生まれた“必然的なもの”であったということです。災害をなくすことはできなくても、私たちの備えと行動で、“減災”をすることはできます。

いざというときにご自身だけでなく大切な人を守るためにも、今できる備えを心掛けていきませんか?


(※)本記事は、内閣府HPを参照し作成しています
https://www.bousai.go.jp/