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環境だより「SONAERU」

“地球目線”で地球について考えたことはありますか?地球と共に未来を創るということ

10月24日、パソナグループ 環境マネジメント推進会議が中心となり、環境経営セミナー2022『地球破壊を防ぐ環境経営 ~地球とのパートナーシップで未来を創る~』を開催。ゲストには京都芸術大学教授・NPO法人ELP(Earth Literacy Program)代表の竹村眞一氏を招き、ご講演いただきました。

▲リアル会場とオンライン参加を合わせて、総勢114名が参加

キーワードは、地球と人類の「共創」。触(さわ)れる地球を用いて、100年先の地球の姿を見据えた企業経営のあり方、未来に繋がる選択肢についてお話いただきました。今回は当日のセミナーの様子を動画と共に紹介します。

【プロフィール】竹村眞一氏(京都芸術大学教授、NPO法人ELP代表)

東京大学文学部哲学科卒、同大学院総合文化研究科(文化人類学専攻)博士課程修了。 独自に企画開発した「触れる地球」はグッドデザイン賞金賞、経済産業省キッズデザイン賞・最優秀内閣総理大臣賞を受賞。地球環境教育の活動母体としてNPO法人ELP(Earth Literacy Program)を設立。2017年~東京都環境審議会委員を務める。

「生きた地球を可視化」する

今回のキーワード「地球共創学」とは

私が研究のテーマにしている「地球共創学」には、“未来の地球との創造的なパートナーシップをデザインする”という意味が込められています。

近年、異常気象といった言葉もよく耳にしますが、1千万年など大きな時間軸で地球を見てみると、実は地球は変化・変動をすることが常態で、むしろこの1万年間が例外的に安定していたのではないかとも言われています。

そもそも人類は、どれだけ地球について知っているのでしょうか。これからの未来を共に生きる地球について、まずは“地球目線で地球について知る”ことから始めてみましょう。

触れる地球で、地球の過去・現在・未来を知る

近年、IT技術などが発展しメタバースなど様々な可能性が広がっていますが、そのような技術を活用して“地球を可視化する”ことが必要ではないかと考え、“触れる地球”として「SPHERE」を開発しました。

触れる地球「SPHERE」では、人工衛星から送られてくるリアルタイムの雲や台風の発生の様子、世界の都市の様子、数億年の大陸移動から地球温暖化の未来予測まで、「生きた地球」の様子を可視化することができます。

▲「SPHERE」には黄砂や大気汚染が世界中に広がっていく様子や過去の災害の様子、森林破壊の現状、都市型の消費生活によって地球の温暖化が進んでいることなど、様々な地球の変化が映し出される。

脱炭素社会の実現に向けて、「環境を守る」「地球をサステナブルにしていく」という宣言が日々飛び交っていますが、地球を守ろうという以前に、私たちは地球のことをしっかりと理解しているのでしょうか。「SPHERE」に映し出される科学的根拠を基にしたデータは、そのような根本的な問題を私たちに気づかせてくれます。まずは地球目線で、地球について知ることが重要です。

環境問題は、全て一つで繋がっている

変化しているのは地球ではなく「人類」

ここで問題です。前回の東京オリンピックが行われた1964年から現在58年が経過しましたが、その間に地球の人口がどれだけ増えたのかご存知でしょうか。

答えは50億人です。当時の人口は約30億人で、現在は約80億人。この会場に50代の方がいらっしゃるとすれば、あなたの人生の中で、既に50億人も人口が増加しているのです。

そして冷戦崩壊後、国際貿易が活発になり、人類全体の経済活動が飛躍的に伸びました。その結果、メガシティといわれる巨大都市の数も大幅に増加しています。また、人類の発展により飢餓・貧困・感染症などの危機を克服し、平均寿命も増加しています。

100年前は16億人だった人口は現在80億人と5倍に、35歳だった平均寿命は72歳と2倍になりました。また、100年前の一番速い乗り物は2頭立ての馬車、すなわち2馬力でしたが、今では軽自動車でも200馬力くらい、すなわち100倍になっています。これらを全て掛け算すると1000倍以上の変化が発生しています。

このように、地球から見ると人類という存在はものすごいスピードで変化し続けており、この100年間で最も変わったのは私たち人類といえます。環境問題の隠れた大きな問題は、これらの変化をしっかりと理解せずに、「近年突如、地球の変化が発生している」という感覚で問題の解決に取り組もうとしていることです。

地球温暖化の影響、そしてスピード感を実感すること

「森を大切に」という言葉をよく聞きますが、その重要性を本当に理解している方はどれだけいるでしょうか。この「SPHERE」に映し出される地球の様子を見ると、地球の安定装置として、森林がどれだけ重要な役割を果たしているかを実感することができます。

▲5月のシベリア付近の様子。工場などが少なくCO2の発生が少ないシベリアも、偏西風によって流されてきた大気によりCO2濃度が上昇し、全体が赤くなっている

▲夏にかけて雪が解けて森林が光合成を行うことにより、CO2濃度が低下し、青くなっている

しかし現在、地球温暖化が進み、森林の減少が加速しています。このまま地球温暖化が進むとどうなるのか、シミュレーションで確認してみましょう。

▲2020年の地球

▲2079年の地球

地球温暖化の影響で、全体が赤くなっています。これが未来の地球です。今後さらに地球温暖が進み氷が解けることで、地球の温度が上昇するだけでなく、水不足による食糧不足など、様々なリスクも懸念されています。

▲水不足によるシミュレーション結果。水不足により深刻な食糧不足や紛争なども懸念されている

言葉で伝えなくても、この地球儀を見ていただければ地球温暖化の影響や、我々人類が及ぼした変化のスピードを、認識いただけるのではないでしょうか。
近年、「脱炭素」「SDGs」などの言葉も飛び交うようになり、多くの人々が環境に関心を持つようになりましたが、まだまだ本当のリスクを伝えられていないのではないかと感じています。

私たちの選択で、未来は変えられる

私たち人類が持つ可能性と選択肢

しかし私たちは、地球の未来を変える可能性とその選択肢を持っています。
これまで人類は、貧困・感染症・飢餓という3つの大きな壁を乗り越え、これだけのスピード感を持って変化を遂げてきました。この巨大な力を逆方向に向ければ、地球にポジティブな影響を与えることができるのではないかと思っています。実際、まだまだ脱炭素社会の実現には課題があるといわれていますが、10年以上という長いスケールで振り返れば、明らかに脱化石燃料・脱原発の動きは加速しています。

そして未来を変えるためには、人類の力だけではなく、“人類界に閉じないパートナーシップ”が大切です。私たちはまだ、海や土、微生物などを保護対象として認識している部分があるのですが、それらが地球に与えている働きも理解して、ひとつのステークホルダーとしてパートナーシップを組み、共に未来を創ることを考える。このようなことが「ポストSDGs」の取り組みになるのではないでしょうか。

“地球の未来をデザインしていく”ということ

これまで地球温暖化について話してきましたが、生命が誕生してからの歴史を遡ると、過去には光合成が活発になったことでCO2が不足して、現在とは逆に地球が寒冷化した時代もありました。つまり、生命は決して受け身な存在ではなく、常に変化しながら地球自体に影響を与えてきたのです。

人類も単に現状維持を目指すのではなく、地球に影響を与えていく能動的な活動が求められます。そしてそのプロセスで、非常に重要な役割を担うのが“企業の存在”です。地球大のサプライチェーンの結節点である企業は、地球と人類の持続可能性を繋ぐ一つの“地球器官”のような存在であり、新しい未来を創るための能動的な取り組みが求められます。

そしてこれまで、バクテリアや陸上植物など様々な生物が地球に影響を与え、地球環境のOSの更新をかけてきました。人類もそのひとつではありますが、人類は単に地球にOS更新をかけるのではなく、そのプロセスを現在進行形で自覚し、その未来を選択してデザインしていくことのできる唯一の存在です。

本日、私が伝えたかった「地球共創学」とは、このような地球の本質的な働きを理解し、パートナーシップを組んで未来を共に創り上げていくということです。そうすることで、人類はエネルギー消費を最小限で抑え、資源消費や環境破壊をしない新しい地球の未来をデザインしていくことができます。

一人ひとりの行動が、新しい地球を創る

一人ひとりが取り組む小さなイノベーションが、地球のあり方を変えていきます。
80億人、100億人にも増えた人類の小さな一歩により、新しい地球との共創が始まる。それだけ一人ひとりの個性や考え方、能力、ビジョンが大切な時代になってきています。

これをキャッチフレーズ的に表現すると、“今や人類一人ひとりの人生が、地球の新しいひと呼吸”。あなたが生きた50年間の仕事が、地球のOSを更新していく。この可能性は、スティーブ・ジョブズのような特別な人だけはなく、誰もが持っているのです。

ですから、「地球人」というのは、地球レベルの視野を持っているとか、地球目線で物事を考えるだけではなく、自分の一挙手一投足、つまり人生そのものが、地球大の影響を潜在的には持ち得るということを意味します。

このような、人々の多様性や個性を大切にして、人を活かした人材育成をしているのがパソナグループだと、私は昔から思っています。是非、ここに「地球人育成塾」を創ってください!