近年、日本を取り巻く自然災害の様相が大きく変わりつつあります。特に、夏から秋にかけての台風シーズンは、かつての常識が通用しないほど、災害の規模や影響が拡大してきています。
今年も台風の接近・上陸が増える時期が近づいています。今回は、一人ひとりが安全に過ごせるよう、「気候変動がもたらす変化」と「個人ができる備え」についてご紹介します。
気候変動がもたらす災害の激甚化
近年、異常気象や自然災害のニュースを耳にする機会が増えていませんか?
地球温暖化をはじめとする気候変動の影響で、自然災害の頻度が増加し、被害もより深刻化しています。世界的にも豪雨による洪水、猛暑や干ばつなど、従来にない激しい災害が多発しており、私たちの生活環境や企業活動に大きな影響を及ぼしています。
そして、夏から秋口にかけての時期に特に注意すべきは台風です。台風は海水温の上昇により発達しやすくなり、豪雨や強風による被害が激甚化しています。また台風のみならず、ゲリラ豪雨など予測が難しい局地的な大雨も多発しています。
気象庁の発表でも1時間降水量80mm以上の強い雨の発生頻度は、1980年頃と2024年を比較すると、おおむね2倍程度に増加しています。
なお、「1時間降水量80mm以上」は予報用語で「猛烈な雨」と言われ、ゴーゴーと降る滝のような雨(=予報用語で「非常に激しい雨」)を超え、息苦しくなるような圧迫感があり、恐怖を感じるレベルの雨となります。傘は全く役に立ちません。

▲グラフ(緑)は各年の年間発生回数を示す。折れ線(青)は5年移動平均値、直線(赤)は長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)を示す
特に都市部では排水インフラの許容量を超える豪雨により、地下街や道路が冠水するリスクが高まっているのが現状です。こうした状況を踏まえ、災害への備えや迅速な対応、そして環境負荷の軽減に向けた取り組みが一層重要になっています。
▼参考/グラフ引用元
・気象庁
大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化
・気象庁
雨の強さと降り方
台風シーズン突入 あなたの備えは万全ですか?
災害を「他人ごと」から「自分ごと」へと意識を変えることが、まずは第一歩です。ご自身とご家族を守るために、以下のように、身近なできる事から対策を心がけてください。
•ハザードマップの確認
自宅や職場周辺がどんな災害リスク(洪水、土砂災害など)にさらされているか、事前に確認しておくことが重要です。
•備蓄品の点検
飲料水や非常食(最低3日分を目安に)、携帯トイレ、電池式ライト、常備薬などの備蓄を見直しましょう。停電や断水に備えることは、当たり前の時代となっています。
•避難行動の確認
避難所の場所とルートを家族で共有しておきましょう。特に夜間や大雨時の避難は危険が伴うため、早めの判断が肝心です。
•ベランダ・庭の安全確認
台風前には、ベランダや庭にある植木鉢や物干し竿、ゴミ箱など飛ばされやすい物を片づけておきましょう。強風で飛ばされると、窓ガラスの破損や周囲への被害につながる恐れがあります。事前の点検が安全確保につながります。
車移動のリスクと注意点
業務や通勤、プライベートで車を利用する方も多いかと思います。台風や大雨の際は、強風によりハンドル操作が難しくなるほか、視界不良、倒木・飛来物との衝突リスクなど「車の運転=命を危険にさらす行動」になる可能性があります。
以下に、そうした状況での注意点をご紹介しますが、少しでも危険を感じた場合は、何よりもまず「運転しない」という判断が、命を守ることにつながります。
•冠水道路には絶対に進入しない
たとえ水深が浅く見えても、水の下でマンホールの蓋が外れていることがあります。また、予想以上に水深が深く、車が水没してドアが開かなくなる可能性があります。
•「いつも通れる道」は通れないと心得る
大雨による通行止めや土砂崩れ、落石などで通行困難になることも。ナビアプリの交通情報機能や、自治体の道路通行情報を活用しましょう。
•車内にも防災グッズを常備
緊急時には車中で数時間過ごす可能性もあります。飲料水や簡易トイレ、モバイル充電器などを常備しておきましょう。
「わたしの備え」社員のリアルな防災対策をご紹介!
毎年被害が大きくなっている台風や大雨。業務でも防災備品の管理等に携わり、実際に日頃から備えをしている、パソナグループ アドミ本部 ファシリティディベロップメントチーム 三宅友美チーム長と坂崎真菜実さんに防災グッズや日常の工夫など「わたしの備え」を紹介していただきました。
三宅友美チーム長
私は岡山県出身で、2018年の西日本豪雨を経験しました。当時の被害を目の当たりにして以来、防災意識が高まりました。現在は、車に緊急脱出用のハンマーとシートベルトカッターを常備しています。いざという時に自分や周囲の命を守れるよう、日頃から備えることの大切さを実感しています。
坂崎真菜実さん

私は淡路島での一人暮らしを機に、警視庁から推奨もされている「防災ボトル」を用意しました。水筒サイズの容器に、ホイッスル、簡易ライト、絆創膏、充電ケーブル、常備薬、クッキー、エチケット袋、圧縮タオルなどを収納しています。カバンに入れておけば通勤中や外出先でも安心です。100円ショップ等で簡単に揃えられ、防水性も高くコンパクトで持ち運びにも便利なので、自分用にカスタマイズして備えておくのがおすすめです。
▲坂崎さんの防災ボトル
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「想定外」が当たり前になりつつある今、最も重要なのは、私たち一人ひとりが「備える力」を高めることです。
台風は毎年訪れる自然現象ですが、その影響を最小限に抑えるための準備は、日頃の心がけ次第です。是非この機会に、防災を見直してみてはいかがでしょうか。