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INITIATIVE「自分のキャリアは自分で創る」WEBマガジン

ライフ 2019.01.22 人生100年時代、 “もう一人の自分”で輝く60歳からの黄金の15年

皆さんは「定年後」と聞いてどんなイメージを持ちますか。
今回は、『パソナグループHRフォーラム 「創る!働き方の未来」』にて講演いただいた楠木 新氏に、人生100年時代における定年後の働き方について伺いました。

●楠木 新
1979年 京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係をはじめ総合企画、支社長などを経験する。勤務と並行して、「働く意味」をテーマに取材を続け、執筆・講演等に取り組む。2015年3月に定年退職。現在は神戸松蔭女子学院大学人間科学部教授。著書に「定年準備-人生後半戦の助走と実践」(中央公論新社、2018年5月)、「定年後-50歳からの生き方、終わり方」(中央公論新社、2017年4月)等。

「こころの定年」に直面する40代


私が50歳以上の方を対象にした人事研修を行う際には、冒頭に「5年後・10年後の自分」をイメージして紙に書いていただきます。しかし多くの方は、定年後に自分が何をしたいかを考えたことすらなく、曖昧なビジョンしか持ち合わせていません。漠然とした不安や期待や希望を抱いています。 

私はこの10年間、数多くのビジネスパーソンへ取材を行ってきました。取材を通じてわかったことは、会社組織に適応して働いていても40代半ばで自分のキャリアに不安を感じ始める人が少なくない、ということです。彼らの声をまとめると、「今の仕事は誰の役に立っているのか分からない」「成長している実感が得られない」「このまま働き続けていいのか」の3つに集約できます。私は、40代半ばを過ぎて働く意味について悩むこの状態を『こころの定年』と名付けました。


 
私自身、まさに『こころの定年』を迎えた一人です。40歳のときに阪神・淡路大震災が発生し、このころから「今の自分のままでよいのか」と悩むようになりました。47歳で東京の本部に異動になった際、環境の変化とともに「ここで頑張ったらもっと出世できるかも」という気持ちと、「少し歩くペースを落としてみてもいいのでは」という気持ちの間で自分の感情が揺れ動くようになり、次第に体調を崩していきました。この経験から、いかに自分が会社に依存して仕事をしてきたかを思い知らされました。

ではなぜ、40代半ばで『こころの定年』がやってくるのでしょうか。その原因の一つは、定年後の人生が長くなり、人生の後半をどのようなペース配分で過ごせばよいのか分からなくなることであると考えられます。

「総労働時間<定年後の自由時間 」という現実


定年後の時間を、具体的な数字で考えてみましょう。
60歳の定年後から74歳まで、自分の自由につかえる時間は1日11時間程度、それ以降は他人の介助を受けながらの人生と考えて1日5.5時間と仮定すると、定年後の自由時間は男性の場合、80300時間となります。女性ではもっと長くなります。
一方で、厚生労働省によると年間の総実労働時間は1781時間のため、21歳から60歳まで40年間勤めたとしても約71000時間。定年後の自由時間の方が長い。

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●定年後の自由時間:80300時間
11時間×365日×15年(60歳~74歳)+5.5時間×365日×10年(75歳~84歳※)
※60歳男性の平均余命は23.36歳のため、84歳までで試算

●定年までの総実労働時間:71320時間
年間の総実労働時間1783時間×40年
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取材を通じてお会いした人は、人生の後半戦を前に立ち往生してしまっている人と、定年後の時間をイキイキと過ごされている人とに分かれ、人生の充実度という点で大きな差があることを実感しました。まさに人生は後半戦が勝負なのです。

何の準備もなく定年を迎えると、実際にはどうなってしまうのでしょうか。
私が取材してきた人をケースにあげると、例えば、今まで仕事中心で家にいる時間が少なかった夫が定年後ずっと家にいることで、妻は過剰なストレスを感じて体調を崩したり、夫婦関係が上手くいかなくなったりするようです。他にも、退職すると社会との接点が少なくなり、名前を呼ばれる機会が減ってしまったというケースもありました。
 
決して全員がそうなるとは限りませんが、定年後のライフプランを考えていないと、誰もが上記のような状況に陥る可能性があります。定年後をバラ色の人生にするためには、会社に在籍しているときから「もう一人の自分」を育み、次のステップを探すことが大切です。

会社に勤めながら、探す・見つける・育てる「もう一人の自分」


先ほどのケースのように、退職して社会との距離も開いてしまった段階で新たな挑戦を始めることは、初めの一歩のハードルが非常に高い。起業・独立という方法もありますが、ずっと企業勤めだった人がいきなり踏み出すにはハードルが高い。一番の方策は、「働きながらもう一人の自分を探し、見つけ、育てること」です。

会社で働きながら「もう一人の自分」を創るには、副業に取り組む、趣味を極める、地域活動・ボランティアに参加する、学び直すなど、様々な方法があります。



「もう一人の自分」を見つける7つのポイント


 私が取材を行ってきたビジネスパーソンの中で、イキイキと自分の人生を歩んでいる人には共通の特徴がありました。「もう一人の自分」を見つけるための7つのポイントをご紹介しましょう。

1)面白いことには年季がいる
“面白いこと”になるには年季がいるものです。新たに挑戦したことを“面白い”と思うまでは、だいたい三年一区切り。会社を退職しないうちに、会社という共同体をうまく使いながら活動を広めていくとよいでしょう。

2)単なる趣味の範囲にとどめない
例えば音楽の趣味を持っていて、老人ホームで演奏をしたとしましょう。その際、単なるボランティアではなく、交通費でもよいのでお金を貰えるようにすることです。対価を頂くことで、社会と繋がっている感覚を得ることができます。会社というしくみから受け取るお金の価値と、個人で稼ぐお金の価値は、異なると発言する人がいます。個人で稼いだお金からは、喜びやエネルギーを得ることができるのです。

3)子供の頃の自分をもう一度呼び戻す
「何から始めていいか分からない」という方は、小学校、中学校くらいの頃に、自分がこだわっていたこと、好きなこと、コンプレックスを感じていたことにもう一度挑戦してみるのも一つの方法です。当時と同じことはできなくても、子供の頃のことを思い出して再開すると、過去と現在が繋がり人生全体に物語が生まれます。同窓会などを活用する手もあります。

4)若いころは趣味より仕事
私がインタビューをした方々の中で今をイキイキと過ごされている方は、若い時は会社人間だった人が多い傾向にあります。目の前の仕事を全うして社会人としての基礎力を養うことで、中高年以降の人生の選択肢が増えるのです。

5)異質の人に学ぶ
企業に勤めるビジネスパーソンの場合、会社が社会との接点になりますが、個人事業主のは自分自身で直接社会との接点を持つ必要があります。そのため、個人事業主はいかにして自分が社会から必要とされる存在であり続けるかを常に考えています。
個人事業主と交流を持つことで、自分を見つめなおすことができるのです。

6)手に届くロールモデルを探す
退職した上司、部活の先輩、うらやましいと思う隣人。自分の手に届きそうな存在の人を複数ロールモデルにしてみましょう。彼らと自分を重ね合わせて見ることで、様々なヒントが得られ、改めて自分自身が見えてきます。

7)自分のスキルはどこで活きるか
人には元来「転身願望」があり、新たな自分に華麗に成長することを期待しがちです。しかし、自分を変えることはむつかしい。今の自分をどこに持っていけば良いかを考えてみましょう。
総務部で就業中の人は「自分には専門性なんて一つもない」と言うが、老人ホームで経理のお手伝いをすると大変喜ばれています。なせなら、スタッフは介護の専門家しかいません。全体を見て総務の仕事を回せる人材は貴重なのです。

まとめ


加齢にともなう自立度の変化を調べた調査によると、男性で約80%、女性で約90%は、70代半ばまでは自分の生活を賄えるレベルまで自立度を保てることがわかっています。定年後から75歳までは、これまでの知見や経験を活かし自分らしく人生を過ごせる、まさに黄金の15年間。「もう一人の自分」を見つけ、ぜひ人生100年時代を充実したものにしてください。

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