文:INITIATIVE編集部
中長期的に労働力人口の減少が予想される中、多くの企業は貴重な経営資源である人材を自社のコア業務・専門業務に集中させ経営効率の向上を目指し、戦略的なアウトソーシングサービスの活用を進めています。こうした中、いま関心が高まっているのが給与計算業務のアウトソーシング。今回は「大手企業より中堅・中小企業こそアウトソーシングが必要」と語るベネフィットワン・ペイロール 足立紀章社長に、これまで日本で導入が進まなかった理由やアウトソーシングすることで可能となる「人事データのワンストップ管理」がもたらす新たな人事戦略の描き方について聞きました。
▲ベネフィットワン・ペイロール 足立紀章社長
(ベネフィットワン・ペイロールHP: http://www.benefitone-payroll.co.jp/ )
高まる給与計算の外部委託ニーズ
――日本企業における給与計算の外部委託ニーズは高いのでしょうか?
アメリカでは給与計算業務の外注率は約70%。一方、日本は約10%と言われており、圧倒的に低い状況にあります。日本企業は、これまで給与計算業務の担当者が社内の専門家として長く務めているケースが多く、その結果、業務が属人化・ブラックボックス化し、外部委託しにくいことがありました。しかしながら近年では、定年退職などを機に、これまで属人的に行われてきた業務を見直し、アウトソーシングの導入を検討する企業が増えています。
給与計算アウトソーシングの市場規模は約2,600億円と言われており(矢野経済研究所「給与計算アウトソーシング市場に関する調査結果2014」)、今後さらなる拡大が見込まれています。こうした背景には、前述のようなベテラン実務担当者の退職のほか、マイナンバー制度の開始等に伴い、社内で従業員の個人情報を扱うことへのリスクに対する関心の高まりなどがあります。
中堅・中小企業こそ給与計算を外部委託すべき
――どういう企業が給与計算業務に課題を持っているのでしょうか?
給与計算業務に大きな課題を抱えているのは中堅・中小企業です。担当者が退職した場合、大企業であれば同じ業務を行っているメンバーが代わって担当したり、中途採用を行うなどして対応できますが、中堅・中小企業はそうはいきません。いざ後任を見つけようと思っても、専門知識を持つ人材をすぐに確保することは容易ではありません。
そして中でも、中堅企業は特に苦労していると感じています。それは、中堅企業がアウトソーシングサービスの導入を検討しても、これまでは従業員数200~1,000名規模を対象にしたサービスが限られていたためです。
現在、給与計算業務のアウトソーサーは、主に社員数1,000名以上の大企業を対象とする専業会社と、主に200名以下の中小企業にサービスを提供する銀行子会社や社労士事務所などに大きく分かれています。
専業会社がサービスを提供する場合、受託する企業の従業員数が増えても手間はそれほど変わらないため、より大規模な案件となる大企業向けにサービスを展開するケースが多くありました。逆に、中小企業は専業会社のサービスを使うとコストが高くなるので、小規模でも使いやすい銀行子会社等に委託するケースが多くありました。
そこで、私たちベネフィットワン・ペイロールは、従来のアウトソーサーが十分なサービスを提供できていなかった中堅企業にも利用メリットの大きいサービスを提供しているのが特徴です。
日本におけるアウトソーシングの固定概念を変える
――企業が給与計算を外部委託する上で、ハードルとなることは何ですか?
外部委託を検討する場合、まず給与データを外部企業に渡すこと自体に心理的抵抗があるのは事実です。また、当然ながら情報漏えい等のリスクを懸念されることも非常に多いです。
しかし、情報漏えい等の懸念があるからこそ、専門会社に委託した方が運用や管理が属人的にならず、リスクを軽減させることにもつながります。また、中長期的な労働力人口の減少やベテラン人材の引退による労働市場のミスマッチ拡大というマクロ環境に目を向ければ、自社の社員のみで業務を回して、その結果ブラックボックス化してしまう方がリスクは高いと考えることもできます。
今後、労働者の働き方がさらに多様化していく中で、各企業の就業規則や給与規定も大きく変えていかざるを得ないでしょう。しかし、人事制度や社内規定は会社毎に異なる一方で、給与計算の仕組みは基本的にどの企業も変わりありません。であれば、給与計算は外部に委託し、今まで給与管理を担っていた社員を、戦略的な人事企画の立案や制度設計などの業務に充てたほうが、企業の中長期的な成長に寄与するのではないでしょうか。
――導入済みの企業には課題はないのでしょうか?
日本のアウトソーシングサービス全般の特徴として、顧客企業の個別事情や独自の制度に“カスタマイズ”してサービスを提供するというケースが多くあります。すなわち、それは定型化されていない従来の業務フローのまま、アウトソーサーが請け負っているケースです。これはアウトソーサーにとっても顧客企業にとっても非常に不幸な状況です。
業務フローが複雑な分、ミスが発生しやすく、逆にコストがかさんでしまうことも少なくありません。アウトソーシングするメリットが薄れてしまいます。
ベネフィットワン・ペイロールでは、こうした日本独自のアウトソーシング文化にとらわれることなく、全ての顧客に対して「サービスの均一化」を目指しています。
そのため、最も効果的な手法を提案するため、場合によってはベネフィットワン・ペイロールのシステムに合わせて、企業に社内制度や運用方法の変更を依頼するケースもあります。最初は手間がかかっても、長い目で見れば大幅な業務効率化を実現できると考えています。
「アウトソーシング会社はクライアントの要望をすべて受け入れる」という固定概念を捨て、より長期的な発展を目指して一歩踏み込んだコンサルティングを行うことを心がけています。
人事データのワンストップ管理が実現する人事戦略
――最後に、ベネフィットワン・ペイロールの未来像を教えてください!
ベネフィットワン・ペイロールは、給与計算アウトシーシングの枠にとらわれず、パソナグループの総合力を活かしてプラスアルファのサービスを提供していきたいと考えています。
例えば、ベネフィット・ワンでは企業の福利厚生・インセンティブ・ヘルスケア等に関わる様々なサービスを展開しています。その中で企業からお預かりしているデータに私たちの「給与データ」を紐付けることで、あらゆる人事データをワンストップで管理することが可能になります。
それにより、個別に想定生涯賃金を計算して資産形成のアドバイスを行ったり、給与データから把握できる勤怠状況とヘルスケアのデータを組み合わせて健康的に働くための支援をするなど、顧客企業の社員に対して、より豊かな人生設計を描くための様々な提案ができるようになります。
またクライアント企業の人事・総務部門に対しても、給与データから見える部署毎の入退社状況や残業時間などをタイムリーに把握して最適な人材コンサルティングの提案をしたり、離職率の動向を見ながら福利厚生やインセンティブポイントの提案をするなど、より企業の人事戦略に資する提案が可能になります。
私たちベネフィットワン・ペイロールが目指す「給与計算アウトソーシング」は、単なる給与計算の業務代行に留まらず、人事データのワンストップ管理を通じて顧客企業が最適な人材戦略を策定・実行することを支援し、さらには一人ひとりの社員の方がイキイキと働く環境を創り上げるための「人事・総務の総合アウトソーシングサービス」を目指しています。
アウトソーサーが企業の人事・総務部門のパートナーとして共に歩むことで、人事戦略の描き方は大きく変わっていくと考えています。
(ベネフィットワン・ペイロールHP: http://www.benefitone-payroll.co.jp/ )
一覧ページへ
あわせて読みたい