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INITIATIVE「自分のキャリアは自分で創る」WEBマガジン

HR 2016.08.12 人口減少と第4次産業革命に対応する「多様な人材の活用」の方法<前編>

文:INITIATIVE(イニシアチブ)編集部

未来に向けて、いま企業が直面する課題は何か、その課題に対する処方箋はあるのか、さまざまな角度から考える連載企画「未来を創る人事」。第2回の今回は、労働力人口が減少していく一方、テクノロジーが飛躍的に発展するなか、多様な人材の能力を最大限に活かす組織になるための方法を考えます。

ICTで広がる柔軟な働き方


育児や介護などのさまざまな事情を抱える社員であっても、ライフスタイルにあわせて働くことができ、さらに時間を効果的に使うことで生産性の向上にもつながる働き方として、「テレワーク」を導入する企業は、ここ数年増加しています。

こうした働き方を支えるため、パソナが2015年5月から開始したのが「リンクワークスタイル推進プロジェクト」。パソナ社員やさまざまな企業で就業するエキスパートスタッフ(派遣登録社員)などの指揮命令および勤怠管理ツールにICT(情報通信技術)を活用することで、テレワーク等の柔軟な働き方の導入を推進しています。
就業環境が離れていても、社員同士がつながる〝リンク〞というコンセプトで、多様な人材が活躍できる環境の整備と労働生産性の向上をサポートしています。

「育児・介護離職などの防止や生産性向上を目指したリンクワークスタイルの導入コンサルティング案件のほか、ハイスキル人材に時短で業務を任せたいという派遣依頼が増えています」(パソナ 営業総本部 リンクワーク推進統括 湯田健一郎)

リンクワークスタイルは、多様な人材を活用するための取り組みであるだけでなく、日本企業が長年培ってきたワークスタイルの変革を実現し、グローバル社会において競争力を高め持続的成長を果たすための経営戦略でもあります。



労働力人口減少による人材不足


こうした新しい働き方が広がりを見せている背景には、今、日本企業が直面する大きな2つの潮流があります。それは、労働力人口の減少による人材不足と、第4次産業革命とも言われる産業構造の転換です。

少子高齢化による中長期的な人口減少は不可避な状況です。日本の人口は2010年の1億2806万人から、2030年には1億1662万人になる(中位推計)と見込まれています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」)

また、2030年の労働力人口は、ゼロ成長に近い経済状況のもと2014年の労働力率と同水準で推移した場合、現在より787万人減少し5800万人になると推計されています。
独立行政法人労働政策研究・研修機構「平成27年労働力需給の推計」)

そうした長期予想を踏まえ、政府は「一億総活躍社会」を掲げ、女性やシニアなどの労働参加率向上と活躍推進に向けてさまざまな施策を行っていますが、労働力人口の減少に伴う人材不足のトレンドは今後も続くことが予想されます。

第4次産業革命が働き方に変化をもたらす


もう一つの大きなトレンドは、産業構造の変化です。2011年頃からドイツで提唱され始めたインダストリー4.0(第4次産業革命)の波は、世界的に広がりを見せています。

第4次産業革命とは、蒸気機関の開発による「動力の獲得」(第1次産業革命)、電気エネルギーの利用による「動力の革新」(第2次産業革命)、コンピューターの出現による「自動化」(第3次産業革命)に続いて現在進行している産業構造の転換で、IoT、人工知能(AI)、ビッグデータの出現により、「自律化・相互協調」がもたらされると考えられています。

すなわち、身の回りのあらゆるものがインターネットにつながり、それらが相互に情報をやり取りするとともに、そうした活動を通じて収集した膨大なデータを管理・分析することが可能になる。また、人間からの指示を受けなくても、分析結果をもとに人工知能が自律的に判断し、アウトプットが生み出されることで、ビジネスプロセスや社会構造が大きく転換していくでしょう。

そうした中、当然、働き方や仕事内容も大きく変化していきます。これまで工場の組み立てラインなどで定型業務のみを担ってきたロボットやコンピューターが、将来、非定形業務にも広がっていくことが予想されます。いわゆるミドルクラスのホワイトカラーが担ってきた仕事の一部は、人工知能とロボットに置き換わっていくことでしょう。

一方、データサイエンティストやシステムエンジニアに代表される、AIやロボットをビジネスでより効果的に活用していく職種のニーズは増加していくことが考えられます。
また、人工知能では担えない高度な戦略策定や商品企画、人間による対面で質の高いサービスが価値を生み出す接客などの仕事のニーズも高まっていくでしょう。今後、仕事の内容や働き方の大きな転換が求められています。



「3つの壁」を克服する


「労働力人口の減少による人手不足」と「第4次産業革命による仕事・働き方の転換」という2つの変化に対応し、企業が持続的な発展を成し遂げるために、人事部門には何が求められるでしょうか。その一つの答えは、「多様な価値観を持つ、優秀な人材から選ばれる組織を目指す」ということかもしれません。

さまざまなバックグラウンドや価値観を持つ多様な人材にとって魅力的な組織になるため、企業人事は3つの壁と対峙する必要があります。一つは「時間と距離の壁」、二つ目は「組織の壁」、最後に「文化の壁」です。

「時間と距離の壁」

本稿の冒頭に紹介した「リンクワークスタイル」の取り組みは、「時間と距離の壁」を壊す取り組みの一つです。例えば、インターネット企業でのデータ分析業務を担っていたパソナのエキスパートスタッフの方は、ご家族の介護により仕事を辞めることを考えたものの、現在は週2日の「在宅派遣」で仕事を続けています。
最新のICTの導入によりコンプライアンスリスクのない業務履行体制が構築でき、優秀な人材に引き続き仕事を依頼したい企業側のニーズにも応えることができるようになりました。

就業を希望しているものの、出産・育児や介護・看護などを理由に働くこと自体を諦めてしまった人は、全国で116万人にのぼります(総務省「労働力調査」)。しかしながら、働く時間や場所をある程度自由に選べる環境を整えることで、その一部の方は仕事を辞めずに済んだり、新たに求職活動を始めたりすることができるのです。

「組織の壁」

次に、「組織の壁」です。企業が新たな業務を依頼する人材を社内異動のみで探す時代は過去のものになるかもしれません。企業はグローバル競争に晒される中で、事業の再編や新しいプロジェクトの立ち上げなどに、よりスピード感と高い専門性を持って対応することが求められています。

そうした中、オープンイノベーションに代表される企業の枠を超えた新規事業開発や、高度な専門スキルを有する社外の人材を登用するケースは、これからますます増えていくでしょう。さらに、優秀な人材の離職を防止するために、副業(複業)を認める会社も増えてきています。これからの企業にとって、組織という概念自体を再定義する必要があるかもしれません。

「文化の壁」

最後に、「文化の壁」の克服です。国内市場が成熟化していく中で、新興国市場はさまざまなリスク要因を抱えながらも、日本企業にとって魅力的な市場であり続けるでしょう。さらにインバウンドなど海外向けビジネスを発展させるために、国内の事業所で外国人が働くケースは今後さらに増えていくと考えられます。

グローバル市場でビジネスを展開するためには、世界中からその業務に最適な人材を探し出し、その人材に働いてもらう仕組みを整えなければなりません。その一方で、日本企業で働く優秀な外国人の中には、職場でのコミュニケーションや仕事の進め方、評価指標などに慣れず、志半ばで会社を辞めてしまう人も少なくありません。これは外国人に限ったことではなく、多様な価値観を持つ優秀な人材の定着を図るためには、さまざまな施策で組織における「文化の壁」を取り払う努力が求められます。



日本型雇用からの転換


「3つの壁」を乗り越えた先にあるのは、日本型雇用からの脱皮かもしれません。時間と距離、組織の壁を越えて多様な人材に業務を依頼するためには、前提として社員一人ひとりの業務や責任の範囲を明確化し、その業務の切り分けを行う必要があります。
さらに、世界から優秀な人材を惹きつけ、自社で活躍してもらうには、日本流の評価・報酬制度の見直しが求められるかもしれません。

壁を壊す特効薬は、おそらく存在しません。一つひとつの課題に、人事部門と現場が連携し地道に取り組むという中長期的な施策が必要となるでしょう。パソナグループはこれからも、企業の戦略パートナーとしてお客様とともに汗をかきながら、3つの壁を克服する人事部門の構築を支援してまいります。

【後編に続く】

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