文:INITIATIVE(イニシアチブ)編集部
2016年1月、秋田県湯沢市の伝統ある名産品を単に店舗で陳列し販売するだけでなく、商品や作り手が語るメッセージ、想いを「ストーリー」としてお客様に伝えるために、クラウドソーシングを活用して、パッケージやラベルデザインや翻訳業務等を手掛ける「YUZAWA Premium」がスタートしました。
(前編はこちら)
「YUZAWA Premium」市内の4事業者が参加
「YUZAWA Premium」に参加したのは、湯沢市内の事業者4社です。
元和元年(1615年)に創業し、雪深い名水百選の地で、昔ながらの寒造り一筋に努める酒蔵「株式会社木村酒造」。800年の歴史を誇る秋田県の代表的な伝統工芸品である川連漆器を製作する「漆工芸 利山」と「佐藤伊右衛門商店」。そして和の調味料の新しい在り方を提案する、味噌醤油製造の「高茂合名会社(ヤマモ味噌醤油醸造元)」。
木村酒造の日本酒「大吟醸福小町」は、国際的なワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2012」ではSAKE部門最高賞の「チャンピオン・サケ」を受賞し、2013年にスイスで行われた2020年東京オリンピック招致のレセプションで振る舞われたこともあるほど。
いずれも小規模事業者でありながら、伝統の技術、技法で一つ一つ真心を込めて作り上げた逸品を手掛けている事業者です。
ICTで時間と距離を越える
パンフレットやラベルのデザインや翻訳を手掛けるのは、パソナテックの「Job-Hub」に登録する全国8万人の在宅ワーカー。地域を選ばす、専門人材の能力や知見を活用することできるのが、クラウドソーシングの魅力です。
川連漆器の佐藤伊右衛門商店が発注した商品パンフットデザインには、約30種類のアイデアが集まりました。テレビ会議システムを活用して三越伊勢丹のバイヤーと打ち合わせを行い、実際に商品を並べる店舗の棚や位置を見ながら、イメージを膨らませたり、商品やデザイン案を見比べながら、パンフレットのデザインを決めました。
佐藤伊右衛門商店の佐藤令子さんは、「今回、外国籍観光客の方々に、自由な発想で漆器を使ってもらえるように、英語の新しいパンフレットの制作を発注しました。2週間という短期間でこんなにたくさんのアイデアが挙がってきたことに驚きました。今後もクラウドソーシングを有効に活用していきたいです」と言います。
「湯沢市と東京は移動に5時間以上掛かりますが、ICTを活用すれば、距離を超えて、相手の顔を見ながら意思疎通を図り、地域の方々とともに商品開発ができるのが大きいです」株式会社三越伊勢丹 和洋酒バイヤー 小幡尚裕さんはICTの利点をこう挙げています。
ついに当日!そこから見えた「地方創生の新しいカタチ」
それぞれの想いを乗せて、「YUZAWA Premium」のお披露目となる、お客さま向けオープニングイベントが3月16日(水)に三越日本橋本店で開催されました。
湯沢市の藤井延之副市長は、「ICTを活用して、一つの地方自治体が創り出す、新たな価値創造の可能性をぜひ見届けてほしい」と語りました。
今回、外国籍の方にも分かりやすいよう、家紋を前面に押し出したシンプルなラベルデザインを開発した木村酒造は、日本酒の試飲会を実施し、外国籍観光客の方々からも「香りが良くて美味しい」「飲みやすい」と大変好評でした。
川連漆器の佐藤伊右衛門商店は、アクセサリーや食器、酒器などを、漆工芸 利山はイタリアンモチーフのグラスやカップ等を展示販売。
また、英語の翻訳を発注した味噌醤油製造の高茂合名会社(ヤマモ味噌醤油醸造元)は、海外販路向けに開発した3種類のお味噌を初お披露目しました。
事業者自らが店頭に立ち、お客さまに魅力を語る。
そこには、クラウドソーシングを活用した新しい地方創生の可能性が見えました。
今回の事業を受けて、湯沢市は2016年度もクラウドソーシングの活用を促進していきます。まずは、市内で在宅ワーカー育成のための研修を6月20日から実施するにあたり、受講者の募集を行っています。
(詳細はHPまで http://yuzawa-cs.com)
また今後、市内事業者・企業、在宅ワーカーに対するセミナーや地域で自立した活動を行えるようにネットワーク形成を行っていきます。
湯沢市のクラウドソーシングを活用した「働き方改革」はスタートしたばかり。パソナグループはこれからも地域と連携しながら、多様な働き方の推進と地域経済の活性化を目指して、取り組んでいきます。