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HR 2016.02.17 シンガポールの労働市場 日系企業の人事の2大トレンド

文:Pasona Singapore Pte Ltd  Sales&Marketing Manager 森村美咲


昨年(2015年)、建国50周年の大きな節目を迎えたシンガポール。建国の父リ・クアンユー氏の死去の際には、国中が深い悲しみに包まれました。その後の総選挙では、リ・クアンユー氏の息子が率いる与党が圧勝し、この先50年ビジョンを改めて考えていく時期に差し掛かっています。

日系企業の海外展開のヘッドクオーター機能が集まる拠点として注目されてきたシンガポールには、現在約1500~2000社の日系企業が進出していると言われていますが、これからもその数はさらに増えていくことでしょう。
今回は、シンガポールの日系企業を取り巻く労働市場のトレンドを2つご紹介します。





国内雇用を守る方向へのシフト


まず、シンガポール政府の方針が、外国人労働者を積極的に受け入れていたこれまでの姿勢から、国民の雇用を守る方向にシフトしてきていることがあげられます。

シンガポールでは、外国人が労働人口の30%を占め、国の労働力の多くを担っていますが、政府として外国人労働力は3割までに留めておきたいという気持ちが常にあります。
シンガポールの雇用法は、比較的企業側に優位な内容ですが、近年、労働省が企業に対して、ローカルスタッフの雇用を増やすよう指導をしていたり、就労ビザの取得が厳しくなるなどという話が出てきています。

一昨年からは、「Jobs Bank」というポータルサイト(https://www.jobsbank.gov.sg/)を政府が導入し、企業が求人を出す際は、外国人の雇用を検討する前にシンガポール人の雇用の検討を促すような取り組みもしています。
企業にEPビザ(主にホワイトカラー向けの就労ビザ)を支給するような求人が発生した際は、14日間このサイトに求人を掲載し、それでもローカルで適した人材が採用できなければ外国人を雇用して良いという仕組みです。

従業員25名以下の企業の場合は、Jobs Bankの掲載義務はありませんが、採用の際には、ローカルスタッフ雇用を念頭に置いた採用活動が期待されています。





日系中小企業が抱えるローカルライズへの課題感


二つ目は、ここ1~2年、日系中小企業の日本人現地責任者から聞くようになったのが、ローカル社員の業務の「ブラックボックス化」です。

シンガポールは、数年で会社を渡り歩く人が多いジョブホッピングの社会ではありますが、日系企業の場合、実は15年~20年勤務しているベテランローカル社員も多いです。そうなると、現地の人事総務等のバックオフィス業務が、通常3~4年で交代する日本人駐在員ではなく、現地のベテランローカル社員に属人的に任されるようになっていきます。

赴任される駐在員は営業のミッションがある上に、シンガポール以外の周辺の東南アジアの国を管轄しなければならない場合も多く、オフィスにいる時間も限られるため、ローカル社員に業務を任せざるを得ない状況になっていきます。

中には、ベテランローカル社員が、1人で人事総務を回しているケースもあり、定期的に変わる雇用法や就業規則のアップデートが追い付かない等、日本人の企業担当者が状況を把握できずに困ってパソナにご相談くださるケースもあります。
中小企業のローカライズのポイントは、ローカル社員を含めた社内の指示系統や報告経路をしっかりと持ち、トップが全体を把握する仕組みを作ることです。

現地では「外国人」として働いている以上、ローカルの人の習慣や考え方、文化を理解し、日本と違うことも受け止めようとする姿勢が大切です。日系企業の良いところや、自分たちのビジネスの目指すべき姿をきちんと伝え、ローカルから学ぶことは取り入れて、対等な立場でビジネスを行うことがシンガポールでは求められています。
 

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