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INITIATIVE「自分のキャリアは自分で創る」WEBマガジン

HR 2017.03.17 多様性を生み出す「真の働き方改革」とは何か【後編】

文:INITIATIVE編集部

同一労働同一賃金の実現や長時間労働の是正を目指して、政府が進める「働き方改革」が社会的な関心を集めていますが、すべての人が個人の価値観に合わせて豊かな人生設計が描ける社会を実現するという「真の働き方改革」を考える上では、働く人の視点に立つことが何よりも大切です。今回は【前編】に引き続き、多様な働き方を実現する取り組みの最前線をレポートします。

※【前編】はこちら

企業の枠を超えた人材育成の仕組み


副業容認と並行して企業に求められるのは、副業が可能となるほどの高いスキルを持つ人材を育成することです。逆説的ですが、企業に依存しない自立した社員を育てることが、中長期的に見れば自社の成長に貢献する社員を育てることにつながります。

日本企業における人材育成で長く主要な役割を担ってきたのは、言うまでもなく現場の上司・先輩社員によるOJTや人事部門主導によるOff-JTでした。しかし今後、副業のように社外で経験を積むことによる人材育成がその重要性を増していくことでしょう。
さらに、一部のITベンチャー企業では新入社員研修を複数社合同で開催するなど、地域の企業が合同で、または大学や行政と連携して人材を育てていく取り組みも始まっています。

そうした産学官連携による人材育成の事例が佐賀県にあります。パソナテックが日本マイクロソフト、佐賀大学、佐賀県、佐賀市とともに運営する「マイクロソフトイノベーションセンター佐賀(MIC佐賀)」です。


▲パソナテックが運営する「マイクロソフトイノベーションセンター佐賀」

JR佐賀駅から徒歩数分のオフィスビルに入居するMIC佐賀では、ITエンジニアなど専門人材の育成のほか、女性や若者を対象にしたICTスキル向上のためのセミナーなどを常時開催。
また、誰もが使えるコワーキングスペースや佐賀に進出する企業のシェアオフィスとしての機能も有しています。最新のテクノロジーを活用できる人材や、テクノロジーを使って地域課題を解決できる人材の育成、さらにはイノベーションを生み出す核となることで佐賀県全体の地方創生を実現することを目指しています。

2016年10月のオープン以来、セミナーは地元企業の社員や佐賀大学の学生で、毎回満席になるほどの盛況ぶりです。コワーキングスペースも毎月150名ほどが利用しており、利用者同士のつながりが広がりを見せるなど、人材育成・イノベーション拠点として地域に浸透してきています。
パソナテック 取締役の粟生万琴は、「社会人に学び直しの機会を提供したいと考えています。企業に属する人もそうでない人も、組織の枠を超えて一緒に学ぶことで、お互いに多くの学びを得ることができます」と話します。

さらに、MIC佐賀では、学びと仕事をつなげることを重視した運営が行われています。
セミナー等で学んだ人は、パソナテックが運営するクラウドソーシングサービス「Job-Hub」を使い、地方にいながらにして都市部と同じようにテレワークで仕事をすることができるほか、地元企業との連携によりインターンシップの機会も提供しています。

複数の企業や産学官の連携により、単独企業では成し得ない人材育成を地域全体で行う試みは、今後、企業に依存しない自立型人材の育成の新たな潮流となっていくかもしれません。

「地方で働く」を支える


一方、地方で人材が活躍する雇用の場を単独で作り上げ、地域の人材力を最大限に引き出している会社もあります。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を手掛ける、プレステージ・インターナショナルです。秋田県、山形県、富山県のBPOセンターで合計2,143名(2016年3月末時点)を雇用し、秋田県下では民間企業として最大の雇用人数を誇っています。

秋田市中心部から車を走らせること約20分。約1万4千坪の広大な敷地に、3棟の建物で合計1,500席を擁する「秋田BPOキャンパス」はあります。
ここはさながら、一つの町のよう。大学のキャンパスをコンセプトにした同施設は、緑に囲まれて時間がゆったりと流れる、アメリカの西海岸を連想させるような雰囲気です。敷地内にはカフェテリアや研修施設はもとより、意欲のある女性が出産後も長く働ける環境を作るための託児所や、24時間365日サービスを提供する従業員が安心して働けるよう社員寮までもが完備されています。

一般的にコールセンターといえば、秘密保持や個人情報保護などの業務特性上、閉鎖的な環境を思い浮かべるケースも多いものの、「お客様にご満足いただけるサービスを提供するためには、まず従業員が快適に働ける環境の整備が欠かせません」(プレステージ・インターナショナル広報担当)。
秋田BPOキャンパスでは、働く人の7割を女性が占めており、従業員からは「育児休業後も安心して復帰できる」「子育てと仕事を両立できる環境で、やりがいを持って仕事に臨める」などの声が寄せられています。業務知識を習得してスキルアップした優秀な人材が、継続的に活躍できることが同社の強みの一つとなっています。


▲プレステージ・インターナショナルの「秋田BPOキャンパス」

2016年12月、同社は秋田市と「子育て世代の移住促進等に係る連携・協力に関する協定」を締結するなど、行政とも連携して人口減少の克服や地域の活性化を目指しています。
また、秋田県、山形県、富山県にそれぞれバスケットボール、バレーボール、ハンドボールの実業団チーム「Aranmare(アランマーレ)」を擁し、スポーツによる地域支援も行っています。こうした取り組みは、地域の人材力を活かして地域に貢献する取り組みとして、新たなモデルの一つとなるのではないでしょうか。

人や企業の「東京一極集中」が進む一方で、大都市圏ではなく生まれ故郷などの地方で暮らし、働くことを希望する方は多くいます。しかし、そうした方が地方への移住・UIターンをためらう一番の理由は「仕事がないこと」です。比較的安い生活費などを勘案しても、地方において東京と同程度の生活レベルを維持できる収入を得られる仕事の数は非常に少ない現状にあります。

一方で、若者の流出などにより人口減少が進む地方では、企業が深刻な人手不足に直面している側面もあります。企業が地方で人材を活かすにはさまざまな工夫が必要ですが、夢のある産業を創り魅力的な雇用の場を創出することができれば、そうした働き手と企業の双方の課題を超克し、真に豊かな働き方の実現に向けた大きな弾みとなるのではないでしょうか。

スマートライフ・イニシアティブを掲げて


本稿で紹介したさまざまな取り組みは、すべての企業で今すぐに導入できるものではありません。また、職種や事業所、地域ごとに異なる社員の「業務成果」をどのように適切に評価するかなど、多様な働き方を実現するためには各社が自社の状況に合わせて検討を進める必要があります。

働く人の視点に立った「真の働き方改革」。日本企業の雇用システムや働く人の意識のあり方が、いま大きな転換点を迎えています。時間や場所、組織という枠組みにとらわれずに、一人ひとりが価値観に合わせて働くことができる社会をいかにして創り、企業に依存せずに自立して働く人材をいかにして育むかという問いは、今後ますます重要になるでしょう。

パソナグループは真に豊かな働き方のできる社会を創るためのアクションを「Smart Life Initiative(スマートライフ・イニシアティブ)」と位置づけ、働き方の多様な選択肢を増やすべくさまざまな事業を行っています。これからも、パソナグループは企業の人事部門とともに各社の課題に向き合い、働く一人ひとりの想いに寄り添い、ともに歩んでまいります。

(2017年1月発行「HR VISION vol.16」より)

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